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描博物誌 歴史と体験

関口文佳×脇田俊

インタビュー作品紹介









結びのカタチ by 脇田俊
<文:関口文佳>






「結び」
それは「生活力」から生まれる行為だった。

 彼は、小学1年から中学3年までの9年間、ボーイスカウトとして活動していた。ボーイスカウトの始まりは、創設者自身が、ハキハキと話す少年に道案内をしてもらったという経験がきっかけだった。「紳士的なたしなみ」を目標とし、野草の見分け方、人命救助、アウトドア、地域の催しやボランティア活動など、さまざまな経験を通して世界規模で活動している。これは、脇田くんにとって「生活力」をつけることに繋がった。一人暮らしを始めても、家事に関して困ったことはなかったという。むしろ、家事が趣味のようだ。私も家事は好きなので、洗濯物は晴天に外で干すのが一番だという彼の話に、うんうんと頷き、ストレス発散 には料理をすることだ、という話が出たときには、手を打って喜んでしまった。梅酒やジャムなどの保存食も自分で作る。そう、彼と私は「生活する」という点において繋がっていた。

 話を進めていくと、ある1冊の本で接点を持った。それが、松浦弥太郎さんの著書「日々の100」である。この本は、著者である松浦さんの持ち物を100点紹介し、そのモノと人との出会いを1点ずつ丁寧に随筆にしたものである。それはまさに、松浦さんの中の博物館である。脇田くんと私もそれぞれ、生活に必要な「結び」や「器と道具」へ焦点をあて、それぞれの中に博物館を開いた。



 ロープの結びは、生活と繋がりにくいと思うかもしれない。しかし、人命救助や荷物の運搬、漁業など、すぐに解けるものから、引っ張られるほどに固く結ばれるものまで、用途に合わせて何十種類もの結び方がある。知らないだけで、欠かせないことなのだ。

「結び」は生活力のある彼だからこそ選べるテーマなのか もしれない。




『茶だんす』 by 関口文佳
<文:脇田俊>






「私は人にめぐまれている」そう言う彼女の周りでは、いつも時間がゆっくりと、穏やかに流れている。
そのような印象とともに、話してみると一つ一つの言動のなかに彼女のこだわりがあることが強くかんじられる。関口文佳はそんな女性である。

 彼女は今では珍しい、ご近所さんがお互いを屋号で呼びあうような、昔ながらの文化が残る町で育ったという。歴史や伝統、人付き合いに対してのおおらかな考え方は、この点に起因するものなのかもしれない。
 谷中・根津・千駄木、いわゆる谷根千と呼ばれる独特の風情がのこる下町が大好きというのもうなずける。

 そんな彼女のこだわりは、当然身の回りに対してもおよんでいる。
「自分が持つものは時間をかけて使い込めるようなものがいい。特に木とかは好き」だという。
また電子メールが普及した現代にあっても、手紙を書くのが好きだと言う彼女は、人との温もりのあるコミュニケーションを大切にしている。
愛読書も雑誌「ku:nel」や暮らしの手帖の現編集長である松浦 弥太郎さんが書いた「日々の100」といった生活に根ざしたもので、彼女は生活する事が楽しくてしかたがないといった感じだ。

 「関口文佳」は自分を取り巻くものとの関係を、丁寧に育ててきている。その姿勢は相手が人であろうと物であろうと変わらない。



そんな彼女だから物に刻まれた歴史を楽しめるし、私達がうっかり見落としてしまいそうな日常の小さな事にも気付けるのであろう。

 彼女の作品『茶だんす』には人のあたたかさと、そこに息づく「生活」が確かに感じられる。



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